第11回のSKIMレクチャーを以下の要領で開催します.
第11回 2023年12月17日(日):13:00〜14:00
斎藤憲氏「全ては正五角形から始まった.『原論』第13巻の正多面体論と第10巻の無比量論」
講演はZoomを用いて行います。受講料無料でどなたでも参加出来ますが、事前登録が必要です。募集人員は
150名(先着順)です。
参加をご希望の方は以下から登録ください。
このことはエウクレイデス(ユークリッド)『原論』第13巻で証明されています.
正4, 6, 8面体が成立することは直観的に明らかですが,正12面体と正20面体は,
そもそもそういう立体が成立するのかが直観的には明らかでありません.
正12, 20面体の『原論』の議論の鍵を握るのは,正五角形の性質,
とくに正五角形の対角線と辺の比が黄金分割の比であるという事実です
(ただし黄金分割という術語は後世のものです).
また相似三角形の性質を巧みに利用する証明の議論も興味深いものがあります.
あまり知られていないのは,『原論』が各々の正多面体に対して,
「外接球の直径 d」対「辺 s」の比を探究していることです.
正4, 6, 8面体ではd:sは整数比になりませんが,それらを一辺とする正方形どうしの比sq(d):sq(s)が整数比になります.
正6面体(立方体)ならこの比は3対1です.
ところが正12面体と正20面体では,D:sもsq(D):sq(s)も整数比になりません.
Dに対するsの関係は,『原論』第10巻の無比量論を利用して記述されます.
第10巻は100個を超える命題を含む長大な巻ですが,精密で退屈な無比直線の分類論に終始する,
研究者からも敬遠されがちな巻です.
しかし正12面体と正20面体の辺の探究から第10巻が生まれたと考えれば,その動機はよく理解できます.